2012年1月のブログ記事 | 津川診療所 福島県 福島市 精神科 カウンセリング 精神療法 心理療法 精神分析 カウンセラー

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2012年1月のブログ記事

治療って?

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 『はじめまして』を読んだある若い人から、「治療ってなんですか?」という質問を受けました。

 『はじめまして』の中で、治療、セラピー、精神療法、精神分析、カウンセリングと、色々な言葉を使いました。これは、ただ言葉を変えているだけだと思ってください。自分のつもりでは、毎日同じことを、ただ一つのことだけをやっています。この人には精神分析を、別のこの人にはカウンセリングを、というわけではありません。

 "治療"を定義するとしたら、その人の人間としての成長を援助するものだ、という表現がまず浮かびます。

 医療機関を訪れる時には、普通、何かの症状があって、それをなくすか減らすのを目的にしているものだと思います。医療者側は、それらの症状を病気の症状だと捉え、どういう病気であるかとの診断をつけ、その病気を治療する。病気が良くなれば症状もなくなる。それが一般的な治療のイメージではないでしょうか。私の言うところの治療、あるいはやっているつもりの治療は、そういうのとちょっと違うという気がします。

 うつという症状があるとします。それをうつ病という病気の症状として見るのではなく、その人の生き方への何かのメッセージだと捉える。そしてそのメッセージが何なのかを、二人で協力してわかっていこうとする、そのプロセスを"治療"と呼ぶ、そんな言い方も出来そうです。メッセージの意味を知ろうし、その人の生き方を検討するということは、その人全体を一人の人間として理解するということにほかなりません。ですから、"治療"という名で呼ばれる場面で、セラピストである私の側がやろうとしていることは、目の前の人を、その人のいるところに自分の身を置いたつもりになって、その人全体を身体感覚的にわかろうとする、それだけだと言ってもいい、という感じです。セラピスト側のわかりかたが深くて正しいものなら、クライエントの側には、通じている、わかられている、受け入れられている、という感覚が生じます。その感覚とともに、自己観察的態度が育ち、自分自身について、感じること、気づくこと、発見することが増していきます。さっきのメッセージの意味も見えてきます。そのことが、自然に、パーソナリティーの変化を、つまりは人間としての成長をもたらします。いつのまにか、受診時の症状は気にならなくなっています。人によっては、さらなる成長を目指して、セラピストとともに自己観察の深化への道を進んでいく、そんな感じです。

 

はじめまして

 みなさんはじめまして、津川俊一です。

 ブログを書いてみようという気になりました。その気になったのにはきっかけがあります。

 比較的最近、立て続けに、二人のクライエントから、「先生の治療についての考え方を、何かに書いて欲しい」と言われました。その二人とも、自分自身もセラピストになりたいとの希望を持ち、その目標に向かって進んでいこうとしている人です。

 精神科医になって、今年で38年になります。その間、精神療法というか精神分析というかカウンセリングというか、呼び方はいろいろありますが、それだけをやり続けてきました。よりよいセラピストになることだけを目標に精神科医を続けてきた、と言いなおしても、まあ同じです。多分多くの方は驚かれるのではないかと想像しますが、そういう精神科医ってほとんどいないんです。そういうっていうのを言い直すと、精神療法を主とした治療だけを毎日行っている、ということでもあります。ほとんどの精神科医は、薬物療法を主とした治療を行っていて、カウンセリングが必要だと感じた場合は、臨床心理士に依頼するのが一般的です。精神療法を本格的に勉強しようと志す精神科医もほとんどいない、というのが現状です。私がセラピストを志した38年前も、そのへんの事情は似たようなものでした。私には、何故多くの精神科医がセラピストを目指さないのか、いまだに不思議で仕方ありません。

 

 その理由として思い当たることは幾つかありますが、そのうちの一つは、これをやっていると自信を持てるようになるのが難しい、というものです。38年やり続けてきても、治療家として一人前になれたという実感には距離があるのを感じます。毎日毎日、仕事の始まる前は結構緊張しますし、終わるころには、どこかしら自分の至らなさを感じさせられる、と言うのが実感に近いです。それだからこそ、つまり奥が深くて汲めど尽きない感じがあるからこそ魅力がある、まあそうも言えるのですが、好きでなければとても続けられない道であることも確かだと思います。

 

 治療家としての自分に自信が持てないことも理由の一つですが、今まで、精神療法に関する論文のようなものを書いたことがありません。著書もありません。ですが今回、セラピストを目指す若い人たちに書くことを勧められ、心が動きました。書くんだったら、論文や本より、こういうほうが自分に向いているという気がしました。セラピストとしての自信は持てないにしても、精神療法について何か見えてきたものがあるというか、師匠の近藤先生が言っていたことの意味が分かってきた気がするというか、そんな感じが出てきていた頃でもありました。何かを発信したいという気持ちが育ってきていた気がします。

  

 当面は、若い人に何か質問を出して貰い、それに刺激されて自分の中から出てきたものを書く、という形を主にして進めていこうと考えています。

 

 

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