孤立型 その一 | 津川診療所 福島県 福島市 精神科 カウンセリング 精神療法 心理療法 精神分析 カウンセラー

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孤立型 その一

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 神経症的性格構造を、人に近づく(for)、人に対する(against)、人から離れる(away)に対応させて、依存型、支配型、孤立型とに分類するというアイディアは、もともとカレンホーナイのものです。神経症的性格構造とは、今までの僕の用語で言えば、"我"です。

 近藤先生は、依存型、支配型、孤立型に、快楽型を加えました。

 僕には、依存型と支配型を一緒にして依存支配型とし、孤立型と快楽型をまとめて孤立型にする、大きく二つに分けるというのがしっくりきます。

 "こび"というのは、孤立型的我の、対人関係面を指しています。今回は、"こび"を含めた、孤立型的我全体の描写を試みます。

 不安と友達になれと口を酸っぱくして言うのが、僕の治療の大きな特徴だと思います。言わない場合でも、その人の、その人にとってはまだ無意識であるかもしれない不安に、僕の方ではアンテナをはっています。不安と友達になれることが、言葉を変えると、不安を感じながらそのままにしておけるようになること、不安を引き受けられるようになることが、治療の重大なステップだと考えています。

 孤立型の人でも依存支配型の人でも、比較的簡単にその感じを掴むことのできる人たちがいます。一方で、なかなかそれがが難しい人たちがいます。不安と友達になることのむつかしさ、むつかしいからこそ、そこに孤立型、依存支配型の違い、それぞれの特徴が良く出る、と感じられます。

  ここでも依存支配型の特徴から述べるのがわかりやすいと思います。彼等が不安を引き受けられないのは、不安を克服しようとするせいだと感じることが多いのです。人を支配することで、あるいは依存して守られることで不安が解消されると無意識に信じて、その為に自らの不安に立ち向かい、何とかしようとする感じがあります。不安を晴らそうするとの表現がぴったりすると感じます。そういう無意識的努力をするからこそ、逆にというか、皮肉にもというか、案の定というか、結果として不安を引き受けられなくなる、不安をそのままにしておけなくなる、という感じです。

 そして、不安を引き受けることはできないものの、不安をちらっとは見る、見ることそのものは拒絶しないという感じがあります。

 孤立型の人の不安と友達になれなさは、不安をそもそも見ようとしない、見るというその行為自体への拒絶がある、という感じです。自分自身の目から不安を隠そうとするという感じだとも言えます。呑み込んでしまう、とも言えそうです。

 あなたは平和主義者だから人間関係での摩擦やトラブルを極端に嫌う。自分の周りが波立ち動揺することを何としてでも避けようとする。そのために自分に最低限できることは、自分の内なる動揺を外に出さないことだ。そして外に出さないためにすぐ思いつくことは、動揺を自分からも隠すことだ。呑み込んでしまうことだ。子供の頃にそんな風に思ったに違いない。

 そう感じて、実際にそんな内容の話をすることが少なくないのですが、ほぼ例外なく孤立型の人がその対象になっている気がします。

 動揺との表現を不安という表現に置き換えることについては説明が要らないと思います。

 動揺にしろ不安にしろ、それらにリンクしている感情を含めて、自分の目からも隠してしまうこと、呑み込んでしまうこと、この感じが孤立型的我を特徴づけている気がして仕方がない。今回最も言いたいところです。あなたの中の生々しい感情が、あなた自身から隠され、あなたの中で居場所を失っている、と言ったりもします。我の、この特徴をを表現するのにぴったりする言葉があると思っています。

 それは"我慢"です。

 孤立型的な人は、我慢される対象であるところの、不安、動揺、生々しい感情に多少の違いはあっても、言葉を変えると、何を我慢するかには色々あっても、何かを我慢しています。どこか我慢強いところのある人たちだと感じます。快楽傾向の前景に出た孤立型の人でも、より深いところでは何かを我慢しています。

 これを依存支配型の人に応用すると、"遠慮"になると思います。支配的な傾向の目立つ人でさへ、遠慮っぽいところが必ずある気がします。我慢(含むこび)と遠慮(含む配慮)。前者が孤立型的我で後者が依存支配型的我です。それぞれの我の特徴を大雑把に表現するのにぴったりしているのではないかと考えます。

 我慢と遠慮の微妙な違い。出だしは本当に微妙なものなのに、結果として出来上がるパーソナリティーの違いの大きさ、多様性。しかしバックグラウンドには最初の(根っこの)微妙な違いが間違いなく流れている。そんな感慨が浮かびます。




 

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