不安 その二 | 津川診療所 福島県 福島市 精神科 カウンセリング 精神療法 心理療法 精神分析 カウンセラー

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不安 その二

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 今まで、自分自身の不安体験について、主に『不安』と『呼吸』の中で述べて来ました。ふと思いついて読み返してみたのですが、自分にとって大きかった比較的最近の出来事が抜けていることを確認しました。その出来事から現在に至る中で感じたことも含めて、不安についての僕自身の体験の推移を、改めて、順を追って振り返ってみたくなりました。

 28歳の時に近藤先生の分析を受け始めました。1年も経たない頃から、胃のあたりに、痛みというか違和感というか、そんな感じが現われてきました。心窩部違和感という医学用語がありますが、心窩部よりはもう少し下だった気がします。近藤先生に、それが不安だ、不安の身体への表れだと言われて、新鮮な感じ、新たな視点を当たられた感じ、そして、思い当たるというか腑に落ちる感じがあった記憶があります。そしてその身体感覚と共に、そこからその感覚が身体全体にびまん性に広がっていく感じ、が出てきました。身体が熱を帯びている感じ、だるい感じ。そしてそれを心理的に表現すれば、落ち着かない感じ、じっとしていられない感じ、何かで紛らわせたくなる感じ、ということになる。自分の中で、身体感覚と不安とのつながりがますます間違いないものになってきました。

   近藤先生から、君のその不安は主観的なもの、神経症的なものだが、不安を主観的なもの(神経症的なもの)と客観的なもの(現実的なもの)とに分けて捉えるようにすると役に立つよ、と教わったことも良く憶えています。
   後者について、こういう場面で生じるものをいうんだよと、具体例を言ってくれた気がしますが、どんな例だったかは忘れてしまいました。要は、こういう状況だったら誰だって不安になるよなあという場面で生じる不安、ということだったと思います。
   また、 今感じているその感覚は、新たに出てきたものなのか、それとも前からあったものを最近感じるようになったのか、どちらか、という意味の質問をされたことも良く憶えています。前からあったものだと感じる、と答えました。

 不安の中身について言えば、仕事に関するものがほとんだったと思います。個別具体的な件での不安が去っても、すぐ不安が結びつく別の案件が生じる。それと、漠然とした不安という表現がピッタリする、具体的なものに直接つながらない不安。今から振り返ると、そのいずれも、医者としての自信の持てなさに通じていたと思います。
   都立大の駅から先生宅に向かって歩いている途中、ガス管工事だったか道路工事だったかの現場を通ることがよくありました。そこで働いている作業員を見て、羨ましく感じたことも忘れられません。この仕事だったらこんなに不安にならないでいられそうだ、という気持ちでした。

 仕事をしている最中にはそれをあまり感じずに過ごせました。不安が生じないようにとの必死の思いだったから不安を自覚する余裕がなかったとも言えるし、仕事をすることが不安の紛らわしとして機能していた、とも言えるでしょう。ところが休日になると、不安をすっかり紛らわすことが出来ない。そして動きたくなくなる。何をするのもだるくて億劫で面倒くさい。一日中パジャマのままで布団の中で過ごす。布団から動かず、テレビをつけっぱなしにしている。集中力をあまり必要としないもの、軽い小説、漫画、を何冊も枕元に置いて、酒が飲める時間が来るまでひたすらそれらで暇つぶし。ほとんどのものが最後まで続かず途中で他のものに手を伸ばす。

 その当時、布団から出たくなくて、尿意を催した時、代わりに誰かにトイレに行って欲しいと願ったことを良く憶えています。

 一週間に一度近藤先生に会って、感じていることを表現する。それが結構苦労でもありました。うまく表現できない。途切れ途切れ詰まりながら、でも、一生懸命言葉を探し、先生に励まされながら、何とか絞り出すように喋っている感じでした。エネルギーを大量消費する感じがあり、疲れると言えば疲れるのですが、50分が終了した時の疲れ感は、いつものだるさとは全然違う。さわやかで清々しい感じ、リフレッシュされた感じ。あの頃は、1週間に1度先生のところに行くことを支えに不安に耐えていた、という感じでした。

 休みの日をほとんど布団の中で過ごすというのは、少なくても数年は続いたと記憶しています。30代の半ばごろから少しづつ変化が生じ、日中は布団から離れられるようになり、近所の散歩や外食に出かけるところから始まって、40代になってからは、山歩きにでかける日が増えてきました。エネルギーが出やすくなってきている感じ、年を追うごとに元気になってくる感じ。そしてそのことが、胃のあたりの違和感が徐々に減っていくプロセスとパラレルに生じている感じ。

 分析が始まって21年間経過した時点で、胃のあたりの違和感はほとんどなくなり、主に休日に感じていた漠然とした不安感も相当減っていました。津川クリニックを開業して6,7年経ち、仕事の面でも、自分なりに張り切って毎日を過ごせていました。近藤先生が亡くなった時、支えを失って困った、という感じがほとんどなかったことを記憶しています。

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