強迫性と自発性 その二 | 津川診療所 福島県 福島市 精神科 カウンセリング 精神療法 心理療法 精神分析 カウンセラー

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強迫性と自発性 その二

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 『性格を変えられるか?』以降の強迫性をめぐる体験を書こうとしてますが、これを言っておかないといけないということがあるのに気付きました。それは、今から書こうとしている強迫性は主に人間関係以外のところに出ているものだ、ということです。人間関係の場面での僕の強迫性は、このブログにこれまで何回も書いている"こび"です。今回はそこにはほとんど触れません。

 『性格を変えらるか?』を書いた頃、以前勤めていた福島県いわき市にある病院を、震災後の応援のつもりでほぼ20年ぶりに訪れ、その後もしばらく1、2週間に一度の頻度で通っていました。病院の建物は何年か前に新築され、震災でも、ハード面の被害はほとんどなかった、とのことでした。放射能被害を怖れて退職する常勤医が続き、医師不足が深刻となっているとのことで、数合わせのためにいくらか役に立つかもしれないという思いでした。

    何回目の訪問の時だったか、僕にとっては目新しい更衣室で、入院患者との面接のために白衣に着替えている時のことでした。急いで着替えを済ませて慌てて更衣室から出ていこうとしている自分に気が付いたのです。更衣室にいるのは僕だけ、誰にも気を使う必要はありません。時間は午前10時ごろ、その更衣室を使っているドクター達はもう着替えを済ませていて仕事中、外の廊下には人の気配がなく、誰かが入ってくる可能性はほぼない。仮に誰かが入ってきたところでゆっくり着替えていてなんの問題もないのはわかっている。僕に急ぎの仕事があるわけでもない。つまり、全く慌てる理由がないのです。

    全くその必要がないのに、慌てて着替えてすぐに更衣室の外に出ようとしている。落ち着かない。病院の職員か誰かが入ってきそうな気がする。その前にそこから出ていかなきゃいけないような気になっている。

     そういう自分を意識した時、誰かというのはおふくろだ、昔からおふくろの目を意識してこんな風な気持ちになっていたなあ、というような感じが生じました。具体的な過去のエピソードを憶えているわけではない。でも今のこの感じは過去の母親との間の再現であることは疑いようがない。そういう強い感覚です。侵入され見られて何か言われる前にチャチャっと済ませおかなきゃいけない。済ませて整ったところを見せなきゃいけない。

 そしてまた同時に、以前から気が付いていた自分の強迫性「早く行動しなければならない」の元がこれだ、という感覚も生じました。

 同じ頃、やはりその病院でのことでした。清潔で居心地のいいトイレで大便をした後、更衣室でと同じように、慌てて身支度を済ませてトイレの外に出ようとしている自分に気が付いたのです。これも全く急ぐ理由がない。なのに、何かに追い立てられるようにそうしてしまう。

 この出来事が僕にとっては大きいものでした。

 普段とは別の環境だったこと、しかも昔しばらくいた場所を久しぶりに訪れていたこと、更衣室とトイレが医師専用スペースのような位置にあり人の気配が少ないところだったこと、それらの条件が重なったことが、この気付き体験のために必要だったのではないかと考えます。普段と違う環境だからその現象が起きているわけではない。いつでも同じ強迫性が働いているが、そのような条件が整ったことでそれに気づくことができた。

 その後、普段の日常生活の中でも同じ強迫性に気が付く機会が増えてきました。

 小便をした後、多くの男性が、ペニスを何回か振る動作をすることには以前から気が付いていました。残尿がないように、後から漏れることのないように、という意図からのものだと察しもついていました。自分はそれをしないことを分析の場で報告し、近藤先生から「そこには何かありそうだね」と言われた記憶が今でも残っています。解明されないままになっていました。ここにも同じものが出ている。

 入浴後身体を拭いて着替えを手にもって自室に戻ろうとしている。その時、足ふきマットを片づけていないことに気づいた。頭では、今手に取っている着替えを一旦置いて、マットを仕舞えばいいのはわかっている。でもそうは身体が動かない。着替えを持って自室に戻ろうとする勢いが強い、その動きを止められない。その強い力が自分の中に働いているのを感じた時、ああこれだ、いつものやつだ、と思い当たりました。今の動作をさっさと済ませて早く早くと先を急ぐ、そしてその動作を始めたら終了までそれもまた早く済まそうとする。

 飲みかけのカップとか、読みかけの本とか、車のカギとか、そういうものを右手に持ったまま何かの動作をする。邪魔だし、その作業が雑になってしまう。右手に持っているものをそばに置いて両手をフリーにしてからにすればいいのにそのままやってしまう。そういうことがしょっちゅうあることも、かねてから気にはなっていました。何かありそうだ、とも感じていました。マットの件の後、すべての現象に同じ力が働いている、早く早くという強迫性がこれらの現象を引き起こしているんだと腑に落ちる感じがしました。

 これらに気づいた後、すべての例で、強迫性が緩んでいるのは間違いないと思います。具体例を一つあげるなら、足ふきマットはほぼ毎回片づけられるようになりました。

 


 

 

 
 
    

 

 

 

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