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院長あいさつ
 その人のいるところに自分の身を置いて、その人の感じていることを感じ取ろうとしている。

 堀田クリニックのカンファランスの場で、ある発表者から、クライエントに対してどういう心構えで臨んでいるのか、との質問があり、こう答えました。正確には「そのつもりでいる」と言ったと思います。答えたその瞬間も、実際にそれが実行されているかどうかに自信が持てていなかったんだろうと思います。言ってみた後から、その疑いがはっきりしてきました。

 つもりではいても、ちゃんとはそうなっていない。できていない。

 特に、クライエントから怒りを向けられている時、その人のいるところに自分の身を置くのが難しい。いや、身を置けていない事実が露呈しやすい。

 長い間、僕に怒りを向け続けているクライエントがいます。その人との最近の出来事を思い出します。その日のセッションは久しぶりに穏やかなやりとりが続いていました。それが突然「先生は私を攻撃している」と怒り出したのです。「全然そんなことはない」と応じると、さらに「私を批判していることに無自覚なだけだ。大体いつも口調が偉そうだ」と言い出します。

 その時に本人を批判していないことには確信がありました。本人の錯覚であることは間違いありません。

 これまでは、本人が怒りだした時、内なる動揺を自覚しつつ、怒りの大袈裟さや主観性を指摘する方向に動きがちだったんだと思います。その怒りに客観性があるかもしれないとの自分自身へのチェックを怠らないようにとの気持ちとともに、怒りの元にある本人の思い込みについての理解を深めようとはしてきました。その積み重ねで、その発生がどこにあるかを含めて、全体的な理解が増してきているとは言えると思います。

 この時は、先の疑いがはっきりしてきたちょうど真っ最中でした。本人が怒り出したのがあまりにも唐突だと感じていたことも関係していたかもしれません。「さっき突然怒り出した時、僕の態度のどこを自分への批判と感じたのか?」との質問が出てきたのです。

 こう書いてみると、ごく当たり前の質問だなあ、と感じます。でも、この質問を発しながら、ちょっと新鮮な感じがしたのです。クライエントのいるところに身を置いてクライエントが感じていることを感じ取ろうとする、それが出来ていたら間違いなくするであろう質問をして、新鮮な感じがした。こういう心境になれていなかったなあ、との感じが浮かびました。つもりだけでやっぱりちっとも出来ていなかった。

 今回僕が一番言いたいことはここからです。「こういう心境」を、「孤独を引き受ける程度が増した心境」だと言い換えることができないでしょうか?自分ではなんだかそんな気がするのです。クライエントが錯覚しているんだということをわからせたい、そうすることで孤独から逃れたい、そんな気持ちに囚われていた気がするのです。その囚われから離れた感じ。

 その質問ができた後、まだ数回ではありますが、なんだか今までとセッションの様子が違います。僕への攻撃の元にある思い込みについての、僕の理解を伝える言葉への反発が減り、うなづく場面が増してきた感じがあります。

 これらの感じが間違っていないとの前提の上で、考察を加えたいと思います。僕が孤独を引き受けると、クライエントのいるところに自分の身を置くのがやりやすくなる、そうするとクライエントの側の"共感され感"が増す。そうなると今度は、こちらにとっても通じた感じが増えてくる。大雑把に言ってしまえば、孤独を引き受ける度合いが増すことイコール共感のレベルが深まること。

 これって、これまでこのブログで書いてきた、煩悩即菩提とか不安即安心とか、そういう感じとそっくりです。

 ここまで書いて、先ほどの質問が出てきた時の新鮮な感じについて、もう少し表現できそうな気がしてきました。

 わからないという感覚を手掛かりに、その感覚が減っていくことを目指す、つまりは体感的な相手理解を深めようとする立場と、本人の立場に立とうとする気持ち。その二つがバラバラな感じ、距離がある感じ、があった。その距離が一気になくなった感じ。

 前者の立場には我の要素が多分にある、本当に本人の立場に立つということは、我なくなるということだ。そう考えると腑に落ちる気がします。攻撃された時に生じる内なる動揺も、我が脅かされていると捉えるとぴったりします。
 
 
 

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