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院長あいさつ

孤独 その二

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 以前に「孤独とつながり」という題で、孤独について少し書いたので、それを「孤独 その一」とみなし、今回のタイトルを「孤独 その二」とします。

 僕の母は1987年に65歳で亡くなりました。僕は38歳でした。子宮癌の術後数年経過し、癌細胞が全身に転移、最後の数か月は父の経営する内科医院兼自宅で療養していました。直後に、まだ元気だった遠方の母の母、祖母、に電話をし、母の死を伝えました。娘である僕の母が、僕の父や僕に見守られながら亡くなったことが何よりだ、看取って貰って娘は幸せだ、という意味のことを言われた記憶があります。慰められ、救われたたような気持になったことを憶えています。

 母が亡くなるまでの1週間ほど、ほぼ付きっきりで看病するという経験をしました。祖母との電話の後、今度は自分の分析の時間に、そこで感じたことを近藤先生に話す事になりました。そのやり取りの中で記憶に残っていることがあります。がんの末期の痛みに対してモルヒネを使い、その眠りから覚めた時、母が、見守っている僕にはほとんど目もくれず、吐いて捨てるように「まだ生きてる」と言った、その言葉にショックを受けた、との僕の発言。先生のレスポンスが、「立派なお母さんだね」というものだったのです。その先生の言葉に違和感を覚えたと言うか、戸惑ったと言うか、ピンとこない感じがしたと言うか、その感覚がはっきり残っています。

 今は、先生のあの言葉の意味はこういうことではなかったか、という気がしています。母は看取って貰うことなど望んでいなかった、一人で死んでいくことを良しとしていた、近藤先生は、僕の話から母のその覚悟を察して、立派だと評したのではないか。祖母とはほぼ正反対のことを言っていたのではないか。

 父の死は2009年、93歳でした。僕はちょうど60歳です。死の直前、1、2日前、に面会した時の印象が強く残っています。 胃がんの手術後数週間経過していたのですが、その日までは、面会時、僕を認めて嬉しそうな様子を見せるのが常でした。ところがその日は、僕を見た時の態度がそれまでとは明らかに違っていたのです。「おまえなんでここにいるんだ」だったか、正確な文言は忘れてしまいましたが、そんな意味の言葉を発し、その父の佇まいから、拒絶された感じと言おうか、一線を引かれた感じ、近づけない感じを受けました。畏怖の感情を呼びさまされた、との表現も近いと思います。僕の中に「親父は死の直前になって真に孤独を受け入れたんだなあ。死ぬと仏になるっていうのはこういうことなのかもしれないなあ」との感慨が浮かびました。

 実は、この文を書き進めるまで、死の直前の母の態度と父の態度がかなり似ていることに気が付いていませんでした。今、「なんだ、そっくりだったんだなあ」と、びっくりしています。ここがまさに言いたいことのポイントなのに、そして明らかに似ているのに、なんでそう認識していなかったかが不思議な気がします。その理由は、母への理解がまだ体感的なものになっていないところにあるのかもしれません。母への感情が十分に整理しきれていないと言っても同じでしょう。当時の近藤先生の言葉を上記のように受け取るようにはなったものの、まだその理解が知的段階に留まっていると考えれば、説明がつきそうです。

 まあでも、35年前(1987年)と比べると、僕の死生観にかなりの変化が生じていることは確かです。

 昔から、ある種の動物が、死期が近づくと普段の住環境から離れて死に場所を求めてどこかに去っていく、との話が気になっていました。そろそろ自分自身の死が近づき、死を意識することが増えてきた最近になって、その死に方に強く魅力を感じるようになってきました。どこでどのように死ぬかの予測はできません。ですが、一人で誰にも看取られずに逝く可能性は相当低いと思われます。看取ってくれる人は近親者の可能性もありますし、看護師とかヘルパーさんとか専門職の人になるのかもしれません。それを積極的に拒絶しようとは思いませんが、でも、心の中では、動物と同じように、自分の死期を直観し、一人の死を迎えたい。人間にとっても、それが本来の自然な死に方であるような気がして仕方がない。そして母も父も、僕にそのようなメッセージを残して死んでいったのではないか、そう考えるとなんだか腑に落ちる気がするのです。

 
 

 

 

 

 

 

 

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