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院長あいさつ

不安 その三

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 近藤先生が亡くなった年が1999年。それから10年弱経過した、2007年か2008年だったと思います。3月の日曜日(当時は金曜日から火曜日が仕事。水木が休みという一週間のスケジュール。)でした。11時の最初のセッションが始まって間もなく、突然、後頭部に衝撃が走りました。ガーンと何か鈍器で殴られたような感じ。そして頭を上にあげられない感じ。上げるとまた痛みが襲ってきそうな感じ。そのセッションは対面だったのですが、下を向いたまま顔を合わさず、何とか50分を過ごし、その日のあと7人との面接も、対面の人とはやはり下を向いたまま、やっとの思いで、穴をあけることだけは何とか免れた、という感じでした。その時すぐだったか後からだったか、「鉄槌を下された」という言葉が自分の中に浮かんだのを良く憶えています。

 高血圧発作でした。
 
 循環器内科の友人に相談し、降圧剤を飲み始めました。よく効いたのか、血圧は比較的すぐに安定し、セッション中の発作がその後起こることはなかったのですが、近藤先生との別れ以降ほとんど自覚せずに過ごせていた不安感が再燃したのです。今度はそれを下腹部に感じる。昔はもっと上で感じていた不安感が、臍を挟んでちょうど反対側、下に降りて来た、という感じでした。そして、以前の不安出現時にはなかった睡眠障害も出現。昼間の安定剤、夜の睡眠導入剤なしには過ごせなくなりました。

 数か月後、冷房を使うようになった頃から、今度は、休みの日に、最初の時と似た症状が起きるようになりました。外出先の喫茶店とか蕎麦屋で、外の気温と中の冷房との温度の違いが刺激になっていたような気がするのですが、何か気分が悪くなってくる。常に携行していた手首式血圧計で血圧を確かめたくなる。でも、一緒にいる妻の目や店の人や客の目が気になってその場ですぐ測れない。トイレに行くタイミングを狙っている。そんなことをしているうちに、特有の頭痛、めまいが起きてくる。座っていられず、店の外に出る。外に出て歩いていると少し楽になる。そういうことが頻繁に起こるようになってしまいました。

 その頃は、目白のクリニックに歩いて通える距離の新宿区西早稲田に住んでいました。前述した循環器内科の友人が仙台にいる、彼の診察を受けに行くしかない。そう決心し、7月の水曜日、妻と一緒に東北新幹線に乗りました。乗車する前から、血圧が高い感じがありました。呼吸法をすると血圧が下がることを体験していたので、乗車して妻と並んで座った直後から、呼吸法を始めました。呼吸法をしていることを妻になるべく知られないように。自分が今血圧を気にしていることを知られたくない、隠しておきたい、という心理でした。上野仙台が約2時間です。とにかく長かった。呼吸法がちっとも効果を発揮せず、血圧が徐々に高くなっている感じを感じる。不安を隠せなくなって、手首式血圧計を取り出しトイレに行って測ったら、最高血圧が200を超えている。それを見たらますます症状が増し、仙台駅に着いた時は、まさに頭が割れそう。最初の発作の時は一瞬だった痛みが、その強度を増して持続し、収まりそうもない。改札を出たところで円状に歩き回り、必死の思いで、仙台に着いた旨を友人に電話、救急車を呼んで方がよさそうだと訴えると、大丈夫だからタクシーで来い、との返事。妻に引っ張られるようにタクシーに乗り、仙台市郊外の友人のクリニックに向かいました。

 20分ほどで、依然来たことのある風景が目に入り、やっと着きそうだと感じた時、さっきからずっと続いていた割れるような頭痛が、スーッと引いていくのを感じました。もうすぐ着くぞという気持ちと症状の軽減がリンクしているのは間違いない。なんだ、この症状は相当心理的なものなんだ、と考えざるを得ない。

 クリニックに着いて、友人と会った時、友人も、さっきの電話での指示に自信があったわけじゃあないんだな、と感じました。後に、「俺も不安だったんだ、実はあの時おまえをどこに入院させようかと考えていたんだ。」と聞いて、その感じが間違っていなかったことがわかりました。そう(友人の不安を)感じたこととつながっているかどうかは定かでないのですが、向かい合って診察が始まると、涙が出てきて抑えられませんでした。半ば泣きながら友人の質問に答え、僕の方は、安心してすっかりゆだねる気分になっていました。白衣の友人のお腹のところに、小さく黒い仏像が座っているように見えた、一種の幻視だと思いますが、という感覚もありました。

 ここまでのところで注目するべきは、不安を妻を含めた周囲に悟られないように動いてしまうことと症状の悪化との関係だと考えます。逆に、同じことの裏返しだと言っていいと思いますが、循環器内科医として信頼を置いているから何も隠さないくていいと思っている友人にもうすぐ会えそうになると、それだけで症状が軽減する。

 もう一つここで述べておきたいことがあります。自分にとってのその時点での最大関心事を隠すという、この傾向についてです。最大関心事と書きましたが、少し大袈裟に言えば自分の生命への不安だし、ぼんやり言えば弱みです。この傾向を自分の性癖だと呼びたくなります。性癖という言葉に含意されているように、根深いものだという感じがあります。そして、それは母との関係に由来しているに違いないのです。具体的な母との間の幼少期のエピソードを思い出すわけではありません。でも、そうに違いない。その確信は体感的なもので、僕にとっては揺るぎようのない感じなのです。



 
  

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